VOC(揮発性有機化合物)って?

健康住宅を見える化する「VOC検査」

VOC揮発性有機化合物)とは、いま社会問題となっている「シックハウス症候群」の原因の1つとされている有害物質で、正式名称『Volatile organic compound』の頭文字をとって「VOC」と呼ばれています。

主に塗料や接着剤、洗剤、印刷インクやガソリンなどに含まれる有機化合物の総称で、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどが代表的な物質として知られています。

 

VOCの主な特徴

・揮発性があり、大気中で気体となる性質がある

・特有のニオイがある

・引火性の強いものもある

住宅の場合、これらの物質は建材や床材、クロス、家具などに使われる接着剤や塗料から発せられています。

知らず知らずのうちに空気中に浮遊する有害物質を吸ってしまうことで、人によって吐き気や頭痛、倦怠感などを引き起こすことがあります。

VOCがもたらす健康被害とは?

健康住宅を見える化する「VOC検査」

住宅から発せられるVOCによる健康被害は、代表的なもので2つあります。

「シックハウス症候群」と「化学物質過敏症」です。

それぞれについて特徴を見てみましょう。

シックハウス症候群とは…

シックハウス症候群とは、その名の通り、住宅の室内環境が原因による健康被害のことを言います。

 

《シックハウス症候群の主な原因》

・有害な化学物質によるもの

・ダニ、カビなどの発生によるもの

・タバコの煙などによるもの

 

《シックハウス症候群の主な症状》

・引っ越した途端、頭痛やめまいが起こる

・体中に発疹が出る

・目がチカチカして、涙目になる

・喉や唇の乾燥

など。

シックハウス症候群は、人によって個人差が大きく、同じ部屋にいるのにAさんは何も感じないのに、Bさんだけが何らかの体調不良を感じるということもあります。

また、これまで何も感じなかったのに、突然発症することもあります。

誰もがシックハウス症候群になるリスクがあるということをよく知っておくといいかもしれませんね。

 

ちなみに、シックハウス症候群は、このあとご紹介する「化学物質過敏症」と症状は似ていますが、継続して症状が出る化学物質過敏症とは異なり、原因となる住宅を離れるとその症状は落ち着くと言われています。

化学物質過敏症とは…

化学物質過敏症とは、過去に大量の化学物質を摂取したり、継続的に微量の化学物質を摂取したりしたことで起こるものです。

 

《化学物質過敏症の主な原因》

・柔軟剤や洗剤

・香水や芳香剤

・接着剤、塗料、ワックス

・虫よけスプレー、防虫剤

など。

 

《化学物質過敏症の主な症状》

・鼻や目、喉などに刺激症状が現れる

・頭痛、疲労感

・めまい、吐き気

・動機、呼吸困難

など。

化学物質過敏症は、一旦発症してしまうと、ごく微量の化学物質を摂取しただけでも過敏に反応してしまうので、症状が重い人だと普段の生活を送ることも困難になります。

しかし、まだ化学物質過敏症の認知度は低く、周りから理解が得られにくいのが現状です。

とはいえ、シックハウス症候群と同じで、化学物質過敏症も誰にでも発症するリスクのあるものです。決して他人事と思わず、社会全体で理解することが必要ですね。

住宅におけるVOCによる健康被害の原因は?

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シックハウス症候群や化学物質過敏症などは、住宅から発せられる化学物質によって室内の空気が汚染されることで起こります。

安全・安心な暮らしをするための住宅であるにもかかわらず、なぜこのようなVOCによる健康被害が起こってしまうのでしょうか?

原因①住宅の気密性が高まったから

ひと昔前の住宅は、あまり気密性が高くなかったので、家中の窓を閉め切っていても、隙間風が通り、自然と空気の循環ができていたものでした。

しかし、近年人気の「高気密高断熱」の住宅では、密閉度が高いため、換気を行わないと空気の循環がされにくくなってしまいます。

これにより、室内に充満するVOCの濃度が高くなり、私たちの体に悪影響を及ぼしてしまうようになったのです。

 

現在では、建築基準法が改正され、「24時間換気システム」の設置が義務付けられました。

これにより、以前と比べて気密性の高い住宅でもVOCによる健康被害のリスクは軽減されたと言われています。

原因②有害な化学物質に対する規制が遅れているから

シックハウス症候群など様々な有害化学物質による健康被害が拡大したことをきっかけに、2003年7月に建築基準法が改正されました。

この建築基準法の改正によって、住宅に使用する建材についての規制が強化されたのです。

しかし、厚生労働省が定めた有害な化学物質は13種類もあるにもかかわらず、実際に規制されたのは、ホルムアルデヒドとクロルピリホスのたった2種類だけ…。

そのため、今の法律では、有害な物質を住宅建材から完全に排除するということはできていません。

VOCなどによる健康被害を減らすための対策は?

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これまで述べてきたように、まだまだ建材に使用される有害化学物質に対する規制は完全ではないのが現状です。

では一体、私たちはどのようにしてVOCなどによる健康被害のリスクを減らしていけばよいのでしょうか?

 

対策①VOC測定を実施する

住宅の室内におけるVOCの発散量を測定するというのも、VOC対策の1つです。

現時点では、法律によって住宅のVOC測定が義務付けられているわけではないため、必ずしもすべてのハウスメーカーや工務店で実施しているとは限りません。

住宅を建てる際は、VOC測定を実施している業者かどうかも参考にしながら、施工を依頼する会社を決めてもいいかもしれませんね。

対策②住宅性能表示制度を参考にする

2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく「住宅性能表示制度」。

様々な指標に基づいて住宅を評価するものですが、その中の項目に「シックハウス対策」があり、換気設備やホルムアルデヒドが含まれている建材の使用状況について第三者機関が評価します。

この結果が良いからと言って必ずしも安心安全な住宅とは言い切れませんが、1つの指標として、参考にしてみるのも良いでしょう。

加えて、住宅性能評価を受ければ、ローンを組む際などに有利になることがあります。資産価値も上がりますので取得しておくと良いでしょう。

 

対策③家具やカーテン選びに注意する

VOCは、建材だけでなく家具やカーテン、絨毯などにも含まれている可能性があります。

前述したVOC測定は、入居前に実施することがほとんどなので、測定時にはVOC濃度が低くても、入居後に購入した家具の影響でVOC濃度が高くなってしまうことも…。

新居に使用する家具やカーテンなどを新たに購入する際は、安全な素材で作られているかどうかも確認するといいかもしれませんね。

対策④換気を十分に行う

入居前から入居後1ヶ月くらいは、特に重点的に換気を行いましょう。

開けられる窓や扉は開放し、キッチンやトイレ、お風呂場などの換気扇も回します。

また、「24時間換気」の設備は常時運転しておくようにしましょう。

家を建てる際にも、換気しやすいように窓の配置に気を付けるといいかもしれません。

対策⑤化学物質を含まない建材を使用する

新築住宅を建てる場合は、なるべく化学物質を含まない自然素材の建材を使用するようにしましょう。

たとえば、ビニールクロスではなく、漆喰壁にしたり、フローリングは合板ではなく無垢材を使用したりします。

ただし、このような自然素材を使った家づくりであっても、完全にシックハウス症候群を予防できるわけではありません。

これまでご紹介したようなVOC測定を実施したり、換気を十分に行ったり、日常的に使用する家具や家電などの選び方に気をつけるなども必要です。

VOC対策をしっかりして安心な暮らしを!

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VOCというのは、建材以外にも様々な場面で使用されているため、知らず知らずのうちに摂取してしまっている可能性があります。

VOCによる健康被害から家族を守るためには、正しい知識を身につけることが大切です。

私たち無添加計画の家づくりでは、全棟VOC測定を実施しています。

あくまでも1つの目安ではありますが、VOC対策への取り組みをしっかり行うことが、そこに住む家族みんなの安心感につながると考えています。

理想の家というのは、人によって様々ですが、どんな家も心地の良い空間であることが最も大切なことですよね。

せっかく建てた家に住んでみたら、体調が悪くなったなど、

今回ご紹介したようなVOCについても理解を深め、長期にわたって住み続けることのできる本当の意味での「良い家づくり」を一緒に目指していきましょう。